ナイトオブゼロの日記 第8話


懐かしい、彼の言葉が聞こえてくる。
水を打ったような静けさの中、彼の声が響き渡る。
これは間違いなく、ジュリアスと名乗っていた頃の彼の声と言葉。
自分の言葉は、シャルル皇帝の言葉だと告げていたあの時の。
殺したいほど憎んでいた父親に、心からの忠誠を誓っていた頃の。
どうやってこんなものを入手したのかは分からない。
だが、紛れも無く、本物だった。
あの日の光景が、昨日のことのように思い起こされる。

『この声の力強さ、この話し方、これが誰なのかすぐに気が付きました』

そうだろう、あのときの彼の言動は、その後の彼の言動とよくにている。
ミレイの目的は、明白だった。
それに、カグヤもナナリーも協力したのだ。
どうしてこんなことを。
彼を救うつもりか?
彼の汚名を雪いでどうする。
ルルーシュがSOSを出していた?
違う、そんなことはない。
蜃気楼は元々ルルーシュ専用機で、あれ以上の機体が存在しなかっただけだ。
C.C.があんな風に姿を現したのも、記録が残らないと考えていたからに過ぎない。
ルルーシュは、関係ない。
ゼロの剣は、誰も気付かないだろうという甘い考えがあったことは認める。
ルルーシュはたまにとんでもないドジを踏むことがある、これがそうなのだ。
それだけにすぎない。
SOSではない、SOSであるはずがない。
ルルーシュが、助けを求めていたなんて、そんなことあるはずがない。
もしそれが真実だったとしても、ルルーシュが無意識下に助けを求めていたのだとしても、今更知ってどうする、何が変わる。すでにルルーシュは死に、彼は悪となった。その彼を踏み台とし、世界は平和になったんだ。
それを壊す理由にはならない。
彼がいない今、彼の望んだ世界を維持することが、唯一の手向けなのだから。

***

「気づいた方もいるでしょう。誰かに似ていると。・・・先程の疑問にお答えします。ブラックリベリオンで枢木スザクに捕縛されたゼロは、その才覚故に洗脳され、ブリタニアの軍師に作り変えられました。それが、このジュリアス・キングスレイです。ですが、その後精神に異常をきたし、戦線離脱したと聞いています。次に彼に与えられた役目は餌でした。ゼロの味方であったC.C.を捕縛するために、記憶をいじられ、エリア11で再び学生に戻されていたのです。ですが、ゼロとしての記憶を取り戻した彼は再び仮面を手に、ブリタニアと戦う道を選びました」
「ま、待ってください、それでは、まさか!」
「ルルーシュ皇帝は、父であるシャルル皇帝を殺したいほど恨んでいました。そんな相手にさえ、心からの忠誠を誓うほど強力なものでした。ユーフェミア皇女殿下が虐殺皇女となった原因とも思われるこの洗脳の呪縛から開放された彼は、その後シャルル皇帝のお命を奪い、その目的を果たしたのです」
「話が飛躍しすぎています!もし、私の想像通りだとすれば、なぜ黒の騎士団は死亡を発表したのですか!?」
「裏切ったからです」
「裏切り?」
「黒の騎士団の幹部が、ゼロを裏切り、ブリタニアに売り渡した・・・いえ、売り渡そうとした。その証拠がこちらの映像になります」

ようやく、彼女が何を目的としていたのか、皆は理解した。

***

映し出された映像には、ゼロの死亡が発表された第二次東京決戦の日、黒の騎士団の日本人幹部の裏切りにより、銃口を向けられるゼロとカレンの姿が映されていた。ゼロが来るまでの間の映像に、シュナイゼルとカノンの姿も写っており、さらには扇の致命的な発言が残されていた。

『いいか、あいつは俺たちを操ろうとするだろうから、十分注意するんだ。シュナイゼルは生死は問わないと言っていたから、迷わず引き金を引くんだ。俺たちはゼロ、いや、ルルーシュと引き換えに日本を取り戻す!もう黒の騎士団にゼロは必要無い!』

これは裏切りの証拠。
ゼロの、ではない。
ゼロを、裏切った決定的な証拠だった。

「なぜミレイが持っている?これは、ダモクレスで死んだディートハルトが所持して・・・いやまて、今までの流れなら、枢木が処分せずに持っていたのか?」

ありえる。いや、それしか無い。
こんな致命的なものまで、どうして取っておいた枢木スザク。

***

・・・そうだよな。と、スザクは思った。
あの荷物が発見されたのだ。この映像だって当然見つかっている。
あの日、黒の騎士団が日本を取り戻すためにゼロを、ルルーシュを裏切ったときの映像だ。ダモクレスに残したままでは危険だと、ルルーシュはカメラとディートハルトの荷物を回収していた。ダモクレス内で合流したときにそれらを預かり・・・後でどうにかしようと、ひとまず押し入れに押し込んだ所までは、しっかりと覚えている。
当時、黒の騎士団の副司令であった扇の言葉にざわめきは大きくなり、全員の視線が一点に向いた。
当然だ。
今この場に、ルルーシュを裏切っておいて、日本の代表の座に収まった扇がいる。
あのときはもう、黒の騎士団は日本のためだけの組織ではなくなっていたにもかかわらず、日本奪還だけしか考えていなかったことは明白で、そのために敵と取引をし、独断でトップの殺害を決めたのだ。

「シュナイゼルお兄様、この時のお話をしていただけませんか?」

静かに放たれたナナリーの声は、恐ろしいほどこの会議室内に響き渡った。
各国の代表達の視線が、シュナイゼルに向く。

「話してもよろしいですか、ゼロ」

シュナイゼルは、ゼロであるスザクに許可を求めた。
全員の視線がゼロに向く。
この状況で断れるはずがない。
それが解っていて、聞いてきているのだ。
そしてシュナイゼルの口から、あの日の真実が語られた。

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